Rakuten Mini レビュー=2台目のスマホとして最適

楽天モバイルのオリジナル端末「Rakuten Mini」を徹底レビュー

話題の「1円端末」こと「Rakuten Mini」をじっくり触る機会があったので、"どこよりも詳しい" レビュー記事としてまとめてみた。


Rakuten Mini


Rakuten Mini」(C330) は楽天モバイルが初の自社ブランドとして独占販売しているオリジナルスマホ。本体価格は税別17,000円だが、現在は1円で購入可能だ。
さらに、月々のプラン料金(Rakuten UN-LIMIT:通常税別2,980円/月)が1年間無料になるうえ、縛りは無く解約も自由。契約時に事務手数料として3,000円(税別)ほど掛かるが、ポイント還元などで相殺されるため、実質的にはユーザ側がすべてにおいてプラスになるという大盤振る舞いである。

メイン番号を移すのが怖ければ、新規契約すると良いだろう。実際、通信品質はエリアによって大きく異なるため、メイン機として使うにはやや勇気がいるかもしれない。
なお、Rakuten Mini の1円キャンペーンは2020年6月17日8時59分までの予定であるが、注文が殺到しているとこのことで、終了日を前倒しする可能性もあるので注意されたい( 楽天モバイル キャンペーンページ 参照)。


Rakuten Mini 側面


・軽さに驚く、重量わずか79g


Rakuten Mini の画面サイズは3.6インチ(1,280×720 ピクセル)と非常に小さく、手のひらにすっぽりと収まる。このコンパクトさが魅力の一つである一方、大画面サイズに慣れているユーザにとっては作業性や視聴面などにおいてストレスを感じるシーンもあるだろう。
個人的には本体の小ささよりも軽さに魅力を感じた。Rakuten Mini 使用後は、大画面サイズのスマホがとても重く感じられ、軽いことのメリットの大きさを再認識させられた。
ここ数年、スマホ画面の大型化が進んでいるなかで、超小型軽量というサイズ感はうまく差別化を図られたと感じる。


Rakuten Mini と iPhone 4 サイズ比較
Rakuten Mini と iPhone 4 のサイズ比較


・10年前のデザイン、上下に太いベゼル


デザイン的には上下のベゼルが非常に太く、2020年のスマホとしてはとても優れているとは言えない。特に下側のベゼルにはホームボタンがある訳でもない。上下のベゼル部分にスクリーンを広げることができれば評価できるが、コストや技術的に厳しかったようだ。なお、製造は中国の Shenzhen Tinno Mobile Technology が請け負っており、高級感はないものの作り込み事態は悪くない。
本体デザインは今一つだが、ユーザインタフェースは悪くなく、直感的な片手操作が可能だ。


・楽天回線エリア内なのにつながらない


通信エリアや通信品質については疑問符が付く。私の自宅は完全に楽天回線エリア内だが、"自宅周辺の広範囲" で楽天の電波(Band 3=1.7GHz 帯)を全くつかまない状況だった(記事執筆時点)。
無理やり Band 固定(44011)しようにも、そもそも電波が飛んでいない。つながるのはパートナー回線 800MHz帯(au=Band 18)のみであり、楽天モバイルの自社ネットワークは利用不可の状況だ。
データ通信の「使い放題」が享受できないという非常に残念な結果となった。パートナー回線(KDDI)だと月間 5GB までは高速通信を利用できるが、使い放題にはならない。

楽天回線エリア
自宅は楽天回線エリア(濃いピンク)内のはずだが・・・

楽天モバイルのサポートにチャットで確認したところ、「〇〇へ行けば、基地局があるのでつながる」などと "意味不明" の回答しか得られなかった。その場所は数キロ先、しかも隣の市である。
何度かやり取りするなかで、ようやく私の住む市は「基地局が整備されていない」ことを認めた。通常の感覚であれば、「あり得ない」回答だと思うが、それ以上のことを聞こうとするとチャットサポートは一方的に打ち切られた。
後刻調べたところ、私の住む人口30万人の市内には楽天の基地局がたった一つしかないことが判明。楽天モバイルが公開しているエリアマップは全く当てにならないと痛感した。
自社回線による本格参入が今年の4月だったとはいえ、ケータイという重要なインフラを扱うのであれば、それなりの責任を伴う。
楽天モバイルは2021年3月までに人口カバー率を7割まで拡大する計画だが、5G サービスをすでに延期しており、電波エリア拡張計画が順調に進んでいるとはとてもいえないようだ。初期のソフトバンクよりひどい状況とみられる。


・端末の動きはサクサク、あなどれないスナドラ439


端末本体に話を戻そう。
ゲームはそれほど試していないが、マップやストビュー、Web ブラウジング、YouTube 視聴などの動作は全く問題なかった。
SoC は Snapdragon 439 が採用されている。このチップは一昔前のミドルレンジ向け Snapdragon 625 と同レベルの処理速度であり、日常使用レベルのアプリやカジュアルゲームであればほぼ問題ないはずだ(Antutu で9,000点台)。
メモリは 3GB、ストレージは 32GB で、どちらも最低限の容量が確保されている。


Rakuten Mini 背面


・おサイフ「FeliCa」チップ搭載


FeliCa チップ搭載でおサイフケータイ機能が使えるのは非常に大きい。コンパクトなのでおサイフ専用にしても邪魔にならないだろう。Suica をはじめ、iD や PASMO、QUICPay などを集約できる。格安 SIM フリースマホで FeliCa 搭載は非常に貴重である。通常、FeliCa を入れるだけで1万円近くコストが上がると聞く。


・カメラ機能「静止画」はまずまず、「動画」はイマイチ


メインカメラは1,600万画素。画素数はしっかりキープしており、思った以上にきれいな写真が撮れた。色調のメリハリにやや欠けるが、アプリなどで修正すれば一丁前の写真に仕上がるはずだ。なお、下のサンプル写真は加工や修正などをしていない。


Rakuten Mini 写真サンプル01

Rakuten Mini 写真サンプル02


遠くのビルのディテールはしっかり記録されているし、近距離の花撮影の出来栄えもまずまずだ。位置情報(GPS の精度)にも全く問題なかった。


ビデオ撮影はあまり期待しない方が良いが、音はしっかりと録音される。記録用途であれば何とか利用できるだろう。



・バッテリは丸一日キープ


通常使用であれば、丸一日使っても途中でバッテリが切れることはほぼ無いだろう。容量 1250mAh の割には、思った以上にバッテリの持ちが良かった。容量が少ないため、充電時間も短くて済む。ただ、本機をメインにするのであれば、モバイルバッテリの携帯を強く推奨する。


・OS バージョンアップの予定無し


OS は Android 9 Pie をベースにしてカスタマイズした特別仕様のシステムが搭載されている。
さらに、片手で操作しやすいホーム画面の UI は好感触だ。
なお、Rakuten Mini の今後について、セキュリティアップデートは提供されるが、Android 10 へのメジャーアップデートは提供されない予定になっており、ここがやや残念なポイントになる。大型アップデートについて、せめて1回はトライして欲しかった。


・通話アプリ「Rakuten Link」の完成度がイマイチ


Rakuten Link からの発信は相手が楽天モバイル以外のキャリアや固定電話であっても無料になるが、IP 電話ベース(パケット通信を利用した RCS アプリ)のため通話品質や安定性はあまり期待しない方がいい。
発着信の精度や通話品質が不安定で、ビジネスとして使うにはやや厳しいといわざるを得ない。アプリの完成度や評判も今一つである。ただ、同アプリは随時アップデートしているため、今後の改善に期待したい。


・顔認証の精度は悪くない


指紋認証ではなく顔認証を採用。しっかりと反応してくれて、レスポンスも悪くないのでストレスを感じないはずだ。出来の悪い指紋認証よりは十分機能する。



その他、本機の主な仕様として、Wi-Fi は IEEE802.11 a/b/g/n/ac、Bluetooth は v5.0、カラバリは3色(ナイトブラック、クールホワイト、クリムゾンレッド)、テザリングは8台まで対応、充電端子は USB Type-C、防水・防塵性能は IPX2・IP5X(防滴仕様)などとなっている。
防水機能は IPX2 であり、ほぼ無いようなものと考えた方が良いだろう。過信すると故障の原因になり得る。
テザリングに対応しているので、モバイルルータとしての役目を果たせそうだが、バッテリを食うため、こちらも期待しすぎると痛い目にあうかもしれない。

さりげなく本体右下にストラップホールを備えているのは評価したい。持ち歩くのであれば、ストラップはぜひ付けておきたい。

細かな点ではあるが重要なポイントとして、SIM は eSIM を採用しており物理 SIM をサポートしない点や microSD カードを使えない点などは抑えておきたい。
また、画面ダブルタップや持ち上げるなどモーションによるスリープ / スリープ解除には対応していない(スリープ解除は電源ボタンを押すしかない)。
スピーカーは上下に付いており、音量は十分だが音質はあまり良くない。

なお、製造時期(製造番号)によってLTE(FD-LTE/TD-LTE)の対応周波数帯が異なる。最新情報は公式サイトのスペック情報で確認されたい。
ある時期から、Band 1(2.1GHz帯)非対応版に変更されているようだ。
楽天モバイルの通信サービスを使う上での支障はほぼ無いが、今後、別のキャリアで使う予定があるユーザは確認した方が良いだろう。



・楽天モバイルのサポート体制は0点


楽天モバイルユーザの情報および私個人の体験を総括すると、サポートへの電話やチャットはつながりにくい状況だ(記事執筆時点)。
また、つながったとしてもサポート品質(電話・チャットの対応スキルやネットワークに関する知識および問題解決へのメソッドなど)は高くないとする評価が多い。
サポート体制の貧弱さは以前から問題の一つにあげられてきた。MNO としてしっかりとした成功を収めたいなら、サポートおよび通信と通話品質の向上は必須条件となる。
すでに大手キャリア3社には回線とサポート体制で大きなアドバンテージがある。すぐには追いつけない。数年がかりで対抗していく覚悟と大きな投資がないと、第四のキャリアとしての存在感を示す道は遠いと言わざるを得ない。


・総評


一番のネックになると思われた電池持ちについてはそれほど悪くはない。画面サイズも慣れれば問題ないだろう。何よりこのコンパクトさは他にはないアドバンテージだ。
基本的な機能を一通り備えており、操作性や処理能力にも問題ないため、メインのスマホとして使えないわけでは無いが、この1台に全てを託すにはやや勇気がいる決断になるかもしれない。特に、サポートを必要とするようなスマホに慣れていないユーザにはお勧めできないし、回線の安定性の問題も残る。使い放題を謳いながら、エリア内で自社サービスが受けられないようでは話にならない。加えて、プラチナバンドを割り当てられていないため、電波がしっかり届くエリア内であっても、屋内や地下では電波状況が一気に悪化する。

総括すると、"まずは「2台目のスマホ」として活用してみることを推奨したい" ということになろうか。このスマホ1本でやり切る自信は到底持てない。



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Author:對川 徹 - Toru Tsugawa(https://tsugawa.tv/)

Contact : https://tsugawa.biz/contact/


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